飲食店経営での年収がヤバイ!1000万円は余裕?それとも難しい?<現役オーナー暴露>
こんにちは。
大阪で、行列の出来るラーメン店「人類みな麺類」など、6つのラーメンブランドを運営している松村貴大(@jinrui_mina_men)と申します。
ラーメン屋以外にも、「焼き肉屋」「大学の食堂」運営などをしています。
▼人類みな麺類▼
飲食店経営をする以上、気になるなることの一つが
『どれくらいの年収を狙えるのだろうか?』
ということでしょう。
そこでこのページでは、「どのくらいの売上があれば、どのくらいの年収を得ることが出来るのか」を出来るだけ分かりやすく解説したいと思います。

「どんな規模のお店をすれば年収1000万円を目指せるのか」を分かりやすくまとめました。
飲食店開業を目指されている方は、ぜひ最後までお読み頂ければと思います!
まずは結論!年収1000万円は余裕なのか?
飲食店経営をした場合の年収について、まず結論から言うと
「1店舗でも年収1000万円は普通にクリアできるし、2000万円だって狙える」
です。
行列が絶えないお店であれば「店舗拡張工事で座席を増やす」や「店舗数を増やす」ことで、さらなる利益確保も可能。
もちろん経営する上では「赤字」という二文字は常に付きまといますので、売上が悪ければ年収0円にもなり得ます。
経営者は従業員(雇用されている人)と比べ、収入への可能性は無限大ではありますが、確約された数字も無いのです。
法人化すると…
余談ですが、利益がある程度大きくなってくると「個人事業主⇒法人化」へと進みます。
法人化は必須ではありませんが、節税メリットが大きくなれば皆さん法人化するでしょう。
この場合、経営者やその他の役員は「役員報酬」という形で会社から給与を受け取ります。
この時、たとえば「3000万円の利益が残ったから、3000万円すべてを経営者の給与として出す」ということは通常しないです。
なぜなら3000万円も受け取ってしまうと、税金が掛かりすぎるからですね。
※節税の話は難しくなるためここでは省きます
つまり「個人事業主」であれば、利益はすべて所得として扱いますが、「法人」の場合はあくまでも会社から受け取った金額だけが所得となります。
ただし「飲食店経営者の年収」においてそこを分けて考えるとややこしいため、このページではあくまでも「個人事業主」としての年収(事業で得た利益=所得)で説明します。
重要!飲食店での年収はこうして決まる!
飲食店経営での年収は「0円もあり得るが、1000万円だって2000万円だってあり得る」とお話しました。
では具体的にどれくらいの売上が出れば、年収1000万円に近付くのでしょうか?
これをお読み頂ければ、「1000万円の年収を目指す時に、どれくらいのお店の規模を考えれば良いのか」が何となくイメージ出来るかと思います。
年収は、毎月の「営業利益」で決まる
当たり前ですが、年収は「毎月の営業利益」によって変わります。
そして毎月の営業利益は、以下の通り「売上-経費」のシンプルな計算で出ます。
一般的には『飲食店は利益率10%残れば良いほう!』と言われているため、とりあえず「利益率10%」で話を進めますね。
もしも利益率10%で話を進めるならば、毎月の売上が800万円を越えなければ、年収1000万円に近付きません。
売上800万円×10%×12か月=960万円
これを見ると『いやいや毎月売上800万円なんて無理だろ!』とお思いになるかもしれませんが、ご安心ください。
実際は、毎月の売上500万円ほどで年収1000万円に近づけます。
「人件費」は自分が店に入れば浮く!
先ほどの表における「人件費」の部分について、自分がお店に入ればその分が浮きます。
まず飲食店において、一般的に「食材費と人件費は売上の60%以内に抑える」のが原則。
飲食ジャンルによっても異なりますが、「食材費30%・人件費30%」が目安です。
そして「家賃も含めて70%に抑えよ」という指標もあり、先ほどの表の値になっています。(この指標は私も妥当だと感じています)
では売上が500万円の時に、自分がお店に入って人件費を削るとどうなるか?
人件費は150万円必要となりますが、自分の給与を「30万円」として仮定すれば、実質は120万円必要ということになります。
つまり(実質は自分の労働によるものだが)30万円分の人件費を削れるので、30万円利益が上乗せされるということです。
となると…
毎月の利益
売上500万円×利益率10%+30万円=80万円
経営者の年収
80万円×12か月=960万円
なんと、年収ほぼ1000万円に近付きました。
では「売上500万円を目指すお店」とはどんな規模感のお店なのでしょうか?
この後説明していきます。

上記の説明を見て、中には『“自分の人件費”を30万円で計算しているけど妥当なの?』と疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。
これは「妥当」と言えますが、このあと説明する「年収1000万円を目指すための店の規模感」をお読み頂ければ、ご理解頂けるかと思います。
年収1000万円を目指すための店の規模感
「売上500万円、利益10%のお店」であれば、経営者は年収1000万円近くを得られると説明しました。
では「売上500万円のお店」とは、どのようなお店なのでしょうか?
これは飲食ジャンルによって
- 客単価
- 回転率
- 客席数
が全く異なるので一概には言えないのですが、ここでは「ラーメン屋」「居酒屋」の2パターンを例にして説明してみます。
なお共通する前提として、
- 営業日数:30日
- 一日売上:16.6万円
として話を勧めます。
ラーメン屋(客単価は低く、回転率は高い)
ラーメン屋は「客単価は低いが、回転率が高い」ビジネス。
この場合に、毎月売上500万円(1日16.6万円)を達成するには…
ここでのラーメン屋の前提
- 営業時間:11:00~23:00(1時間中休み)
- 客単価:1000円
- 回転数:2回/h
上記の前提であれば、1日166杯売る必要があります。
10時間営業なので、1時間16.6杯売れればOK。
1時間に2回転するので、9席あれば1時間に最大18杯売ることが出来ますね。
9席の場合、かなり小さい店舗なので「自分+社員一人+アルバイト一人」の計3人で回せます。
社員への給与を50万円にしてアルバイト時給を1000円にしても、人件費は80万円。
※年中無休だとしても、社員には「休日」を与えなければなりませんので、その分アルバイトが必要(月8日休日があれば8万円くらい)
もともと人件費は「売上500万円の30%(150万円)」で考えていたので、なんと62万円も浮くことに。
そして利益率は10%なので50万円。合わせると112万円。
年収は1344万円になりますね。

実際にラーメン屋を開業している経験から言えば、これが「小さい箱で高回転させられるビジネス」の強みだと思っています。
ただ実際はオーナーも休むでしょうし(上の例では休み無し)、一日中満席で回転し続けるお店を作るのはかなり難しいです。
居酒屋(客単価は高く、回転率は低い)
居酒屋は、ラーメン屋と比べると「客単価は高いが、回転率が低い」ビジネス。
ただしランチ営業の場合は、ラーメン屋と同じく「低単価・高回転」になります。(ここではその前提で説明します)
この場合に、毎月売上500万円(1日16.6万円)を達成するには…
ここでの居酒屋の前提
ランチ営業
- 営業時間:11:00~15:00
- 客単価:1000円
- 回転数:2回/h
ディナー営業
- 営業時間:17:00~24:00
- 客単価:4000円
- 回転数:1回/2h
仮に席数を、ラーメン屋の例と同等に9席にしたとすると、
- ランチ:1000円×9席×2回転/h×4時間=7.2万円
- ディナー:4000円×9席×0.5回転/h×6時間=10.8万円
合計18万円
なんと常に席が回り続ける前提で言えば、9席でも最高18万円の売上になる可能性が…。
こうなるとラーメン屋の例と同じように、小さい店舗で運用できるため人件費が浮き、最終的には年収1300万円を越すかもしれません。(人件費の細かい計算はラーメン屋の例を参考にして下さい)
ただしこの計算は、パッと思いつくだけでも以下の様な詰めの甘い部分がたくさんあります。
- ランチは「15時まで満席で回転し続ける前提」だが、居酒屋のランチにそこまでのニーズがあるのか?
- ディナーは17時から既に満席の前提だが、居酒屋で17時から満席にさせられるほど、他店との差別化を図れるか?
- 9席を無駄なく埋められるように上手く配席できるか?
店の規模感は10席くらいでもOK?
これまでの「ラーメン屋」と「居酒屋」の例を見る限り、10席くらいで年収1000万円を狙えなくは無いです。
たとえばカフェであっても「ラーメン屋と同じくらいの客単価・回転率」だと仮定すれば、なかなか利益が出ますね。
カフェの場合は正直「客単価」はもう少し下がるでしょうが、「テイクアウト」の概念もあるのが強いです。
ただしビジネスは、どれも「机上での計算」通りにはなかなかいかないもの。
ここで挙げた内容は、いずれも一つの参考程度に捉えて下さい。
ただし「ラーメン屋」に限って言えば、私は実際に「満席で1日中回し続ける」ことを実現しておりますので、他の飲食ジャンルでも可能でしょう。
たとえば居酒屋や焼き肉屋では「予約」の概念があるので、行列がなくとも「満席で回し続ける」ことは可能ですね。
とは言え、ラーメン屋のように「少人数でも食べに来る」ビジネスの方が、「無駄な空席を作りにくい」という意味では、人気店になってからは利益が伸びやすいとも言えます。
もしもラーメン屋にご興味をお持ちになられた方は、以下もどうぞ。
関連ブログ
>><ラーメン屋開業ブログ>100人超の行列を創る店主が秘策を語る
「利益率」が上がれば小規模でも1000万円に到達できる
ついでに「大切な考え方」を、もう一つお伝えしておきます。
ここまでの説明をお読み頂く中で、勘の鋭い方であれば気づいておられるかもしれません。
以下の図を見て、そして今までの話を振り返って何かお気づきになりますでしょうか。
答えを言うと、「売上が上がれば上がるほど、利益率もどんどん伸びていく」ということ。
『え?普通では?』と思った方、「利益」が伸びるのと「利益率」が伸びるのとでは全く話が異なります。
「率」が伸びるのは素晴らしいこと。
ラーメン屋の例や居酒屋の例では上記の表を前提として、売上500万円を上限かつ目標として、逆算で席数・人件費を割り出しましたが…
- 家賃
⇒10席で50万円も掛かる?仮に40万円の物件を契約していれば8%まで落ちる。
- 人件費
⇒ラーメン屋の例の自分の給与を30万円とするならば、88万円を足しても118万円。23.6%まで落ちる。
- 光熱費
⇒一般論として10%を前提としているが、10席の店となると、実際は15万円ほどで済むため3%まで落ちる。
つまり小さなお店でフルフル席を回転させることが出来れば、上の例で言えば利益率は21.4%までアップするということです。
上場企業の営業利益率は「平均8%」と言われている中、この数字を本当に達成できればスゴイですね。
大切な部分を補足!
余談ですが、大切なので2点補足です。
1.売上目標の計算方法
実は、本来であれば【家賃を前提に売上目標を立てる】にも関わらず、このページの例では【1000万円稼ぐ前提で売上目標を立て、それに対して「どれだけ小さいお店で実現できるのか」が分かるように逆算している】のです。
『どれくらいの規模の店なら1000万円いけるんだろう?大きいお店でなければいけないのかな?』と疑問を持たれるかなと思い、そのようにしてみました。
つまり、本来であれば「10席だとせいぜい家賃40万円だから売上目標400万円。では人件費は30%の120万円。光熱費は40万円…」こんな感じで目標や各費用の妥当性・実現の可否を決めていきます。(私の場合)
2.効率が上がれば「利益率」は伸びていく
「利益率が上がる」ことに不思議に思われた方がいらっしゃるかもしれませんが、
- 固定費である「家賃」は、売上が上がれば上がるほど「売上に対する家賃比率」としては落ちていく。
- 同様に「人件費・光熱費」も、1時間あたりの客数が増えれば増えるほど、遊び(無駄)がなくなり費用対効果が高まる(たとえば、部屋を暖めるエアコン代は満席でもガラガラでも一緒)
ということです。
物件・人・光熱費に関わらず、無駄が無くなれば(効率が上がれば)それだけ利益率が伸びる。シンプルです。
とりえあず【利益率10%でもスゴイと言われる中、小さいお店でも人気になれば利益率20%超えが可能であり、年収1000万円を超えることも出来る】ということです。
関連ページ

勘違いないようにお伝えしておきますが、どれも簡単な話ではありません。
また飲食ジャンルによって「客単価・回転率」は変わるため、『どんなジャンルでも小さいお店で1000万円可能!』とは考えないで下さい。
どれもあくまでも理論上のお話です。
お金を先に考えない方が良い!
ついでなので「飲食ビジネスをする際に重要な心構え」を一つ。
あくまでも私の考え方ですが「飲食店=人」です。
来店頂いたお客様一人ひとりに対して、感謝の気持ちをもって最大限のサービス(接客や商品提供すべて)を出来るかどうか。
もちろん生きていくために最低限のお金は必要ですが、「自分の利益最大化」ばかり考えていると良いお店は出来ないと思っています。
なので『年収(利益)は後で付いてくるもの』くらいの考え方を持てると良いです。あくまでも私の飲食への向き合い方ですが…。
この辺の考え方については、以下で色々と説明しております。
関連ページ
まとめ
飲食店経営での「年収」の決まり方や、必要なお店の規模感について説明しました。
最後に、このページの要点を簡潔にまとめてみます。
- 1店舗でも1000万円の利益(年収)を得ることが出来るが、もちろん「赤字」だってあり得る。
- 年収は毎月の「営業利益」の積み重ねだが、自分がお店に立つと人件費が浮くため、利益率は少し伸びやすくなる
- したがって年収1000万円を目指す場合、単純計算だと毎月売上800万円が必要だが、自分が店に入るならば500万円ほどの売上でも目標年収を狙える
- 試算ではラーメン屋でも居酒屋でも、10席あれば1000万円を目指せる
- ただし「空席はロス」と考えると、少人数のお客さんを相手にするラーメン屋の方が、席に対する無駄は出にくい
- 上場企業の平均利益率は8%と言われているが、小さいお店で高回転させることが出来れば(人件費や光熱費に対する効率を上げる)、利益率20%は普通に超えられる
- 家賃を売上比率10%で考えて、売上目標を考えていく(松村の場合)
このページを見て『飲食店に挑戦してみたい』と思われた方は、ぜひ以下も目を通してみてください。
>>小さい飲食店の開業資金目安と、小さく経営する7つのメリット!
またこのページでは「人件費・食材原価」をそれぞれ30%で説明していますが、それは「FLコスト」や「FL比率」を知ることで、より理解できると思います。
その他、お金に関することとして「家賃」についてまとめています。
>>飲食店の家賃比率が10%である本当の理由【わかりやすく解説】