飲食店の家賃比率が10%である本当の理由【わかりやすく解説】

飲食店の家賃比率が「10%」と言われている本当の理由
【論理的に分かりやすく解説】

こんにちは。

 

大阪で、行列の出来るラーメン店「人類みな麺類」など、6つのラーメンブランドを運営している松村貴大(@jinrui_mina_men)と申します。

 

ラーメン屋以外にも、「焼き肉屋」「大学の食堂」運営などをしています。

 

▼人類みな麺類▼

 

 

飲食店を開業する際に必要となる「家賃」。

 

売上に対する「家賃」の比率を「家賃比率」と言いますが、この家賃比率を「10%以下」もしくは「10%前後」に抑えようというのが一般的に言われています。

 

特に「初めてお店を開店する」のであれば、やはり10%に抑えておくべきだと私も考えています。

 

ここでは「なぜ10%以内と言われるのか」を分かりやすく、かつ論理的に解説していきたいと思います。

 

 

『10%にせよ』と言われますが、『じゃあ、なんで10%なの?』という点は曖昧なことが多いです。

 

これから開業される方にも分かりやすい様に説明しましたので、ぜひ最後までご覧ください!

 

なお、ここで書いた内容はあくまでも私個人の考えなので、一つの意見として参考にして頂ければ幸いです。


 

 

 

 

 

 

「家賃比率」をパッと理解しよう!

「家賃比率」とは「売上に対する家賃の比率」のことを言いますが、図でも説明しておきます。

 

 

たとえば家賃が「50万円」の物件で売上が「500万円」あれば、家賃屋率は10%ですね。

 

この比率を「10%以内に抑える」というのが、利益を出す上での一般的な指標。

 

ちなみに「FLR比率」という言葉がありまして、これは

 

  • Food:食材費
  • Labor:人件費
  • Rent:家賃

 

の3つを指しています。

 

そして『FLで60%以内に』『FLRは70%以内に』と言われているため、おおよそ家賃は「10%前後」が一般的指標となっているのです。

 

 

 

家賃比率は常に上下する!

当たり前ですが「家賃比率は常に変動する」ということを覚えておきましょう。

 

一般的に家賃比率を考えるタイミングというのは、「開業時のシミュレーション」でしょう。

 

たとえば「売上目標500万円」として考えたとき、家賃は50万円以内であれば大体OKです。

 

ですがいざ開店してみて売上が400万円だった場合、家賃比率は12.5%まで上昇してしまいます

 

もちろん目標の倍である1000万円の売上があれば、家賃比率は5%になります。

 

そのため、開業後に地獄に陥ることのない様にまずはしっかりとシミュレーションしていきましょう。

 

このシミュレーションをする中で、独り歩きしている「家賃比率10%」の意味が理解できるかと思います。

 

 

 

 

飲食店での家賃比率は「10%」である理由を解説する!

ここからのお話は、飲食店開業をする上で

 

「絶対に知っておくべき話」

 

です。

 

なるべく理解しやすいよう工夫しましたので、ぜひ飛ばさずに最後までご覧ください。

 

 

まずは「目標」をシミュレーションしてみる!

「なぜ家賃比率10%という数字が出てくるのか」について、とりあえずシミュレーションをご覧ください。

 

シミュレーションを追ってみると、「10%の意味」「家賃比率の重要性」をご理解頂けるかと思います。

 

まず「売上」と「経費」の話では、ざっくりと以下の様な項目・数字が出てきます。

 

 

 

上図では、すでに説明した「FLRコスト(食材費・人件費・家賃)」を70%に抑える想定です。

 

さらに『利益率10%は残そう』という基本的な考えも入れ込んでいます。

 

ではこれをベースに、分かりやすく「売上300万円のラーメン店」を当てはめてみます。

 

 

 

次に「月26日営業」で「売上300万円」を目指す前提で、日ごと・時間ごとの目標に落とし込んでみます。

 

  • 一日の売上目標:11万5000円
  • 客単価1000円の場合:115人/日
  • 営業時間10時間の場合:11.5人/時

 

1日115杯、1時間につき11.5杯を売ることが出来れば目標クリア。

 

これを毎日クリアします。簡単でしょうか?

 

あくまでも「ラーメン店」の話で言えば、個人店であれば一般的に「一日100杯いけばかなり良い」と言われています。

 

私の創業店「人類みな麺類」も、今では行列を作って頂けるお店へと成長できましたが、最初は「1日10人」の日もザラにありました。

 

あなたが出店しようと思う場所において、あなたが考えているものと「同じ」もしくは「似たような飲食ジャンル」で、客単価を調整して「理想の客足」を計算してみましょう。

 

なお、あなたが『お客さん入ってるなぁ』と思っている時間帯は「多くの人が行く時間帯」でもあるかもしれませんので、しっかりと調査してみましょう。

 

多くの方は、このシミュレーションが甘くなりガチ。都合よくシミュレーションしてしまいます。

 

それを裏付けるように「1年で30%、2年で50%の飲食店が潰れてしまう」というデータがある通り、廃業率の高さに表れているのです。

 

私も含めてですが、皆さん『自分のお店は特別だ』と考えて出店されます。

 

ですが「シミュレーション通り」いく可能性はそれほど高くないのです。

 

関連ページ
>><飲食店の廃業率>2年以内に50%が閉店する5つの理由と、潰れない店の特徴

 

 

 

 

もしも予想よりも売上が低かった場合

上記では売上目標をクリアできたことを前提に「利益30万円」が残ります。

 

ではもしも売上が200万円(7万7000円/日)だった場合はどうなるのかと言うと…

 

利益は甘く見積もっても10万円です。

 

『えっ?利益率10%だから20万円じゃないの?』とお思いになるかもしれませんが、そうはなりません。

 

なぜなら家賃は「固定費」で30万円のままであり、かつ利益はそもそも「変動費」ではないからです。

 

以下は「目標300万円」だったが「実際の売上200万円」だった場合の、ざっくりした試算。

 

 

 

仮に家賃が「10%の変動費」だった場合は、家賃20万円になるので利益も20万円(利益率10%)残ります。

 

しかし家賃が「固定費」である以上、目標より売上が少ない場合はダイレクトに利益に響いてきます。

 

さらに先ほど『甘く見積もって10万円』と言いましたが、それは「光熱費」は「固定費+変動費」で構成されているからです。

 

たとえば

 

  • 店内を暖める電気代
  • 食材を冷やし続ける冷蔵庫の電気代

 

などはお客さんの有無に関わらず掛かり続けるため、いわゆる「固定費」です。

 

つまり「光熱費のうちの固定費部分」も利益を圧迫するため、実際の利益は7万円くらいまで下がると思います。

 

なのでざっくりと利益率は「3.5%(7÷200)です。

 

ちなみに、減少の割合を見ると

 

  • 売上目標300万だったが、実際は200万

    ⇒売上は34%の減少

  • 利益目標30万だったが、実際は7万

    ⇒利益は77%の減少

 

であり「売上の減少率」以上に「利益の減少率」は高いです。

 

これは売上が落ちても「固定費は変わらない」ことで、利益を圧迫しているからです。

 

 

『目標としていた7割くらいしか来客がない』というのは十分にあり得る話。

 

ここまでのお話で、まずは『固定費は軽視できない』ということをご理解頂けるかと思います。


 

 

 

もしも家賃比率13%にしていたらどうなる?

中には『“FLR比率70%以内”であれば、食材費・人件費を抑えて、家賃比率を少し上げても良いのでは?』と考える方もいらっしゃると思います。

 

※そもそも「FLR比率70%」も絶対ではなく、「利益を残すために推奨されている指標」です

 

その考えから、仮に「家賃比率を13%にしていた」かつ「売上目標の300に届かず200だった」場合は以下の通りです。

 

 

 

固定費の家賃が9万円高くなりましたが、変動費である「原価」は3%安くなったことで60⇒54万円に。

 

ということでざっくり計算すると7万円残りました。

 

上で挙げた「光熱費も一部は固定費」という事も考慮すると、残るのは4万円ほどかと思います。

 

 

かなりおおざっぱなシミュレーションではありますが、家賃比率を3%上げてしまっていた場合には、利益としては7⇒4万(43%減)していたことが分かります。

 

このように、売上が低くなればなるほど「固定費(とその比率)」がジャブのように効いてきます…。


 

 

 

「10%」という数字には、特に意味はない

ここで「10%」という数字の意味についてです。

 

まず、

 

売上目標に到達しなかった場合、「売上の未到達率」以上に「利益の減少率」が高まる。それは、目標よりも売上が落ちたとしても「固定費は変わらない」ため、利益を圧迫するからである

 

ということは述べた通りです。

 

つまり、開業後のリスクを考えた場合は「固定費は低ければ低いほど良い」のです。

 

だから当たり前ですが、家賃比率の理想としては「10%」よりも低い方が良いのです。

 

シミュレーションで「家賃比率10%以下」を狙える場所があるなら、そこで開店するのがベスト。

 

では「10%」とはどこから出てきた数字かと言うと、これは『統計的に見て、10%くらいに収めておけば、リスクも少ないし利益も狙えるよ』という意味だと私は思っています。

 

 

個人的には「リスクを抑える」という意味合いの方が強いと考えています。

 

その理由は、この後の「売上が上がれば家賃比率は下がりまくる」で説明します。


 

 

 

 

売上が上がれば「家賃比率」はめちゃ下がる!

続いては、これまでの話とは反対に「売上が上がれば家賃比率はめちゃくちゃ下がる」というお話。

 

これも大切な話であり、これをお読み頂ければ「家賃比率10%」というのは『リスクを考慮して、なるべく家賃比率を下げて開業しましょう』という意味合いが強いことが分かります。

 

 

家賃の10倍以上の売上は普通に出る!

ここまでの『家賃比率は10%に』という話は、言い換えれば「家賃の10倍の売上を目標にしよう」というのが大前提にあります。

 

でもそれはあくまでも「10%の利益を出すための目標値」であって、人気のお店になれば「家賃の50倍やそれ以上」の売上にもなります。

 

たとえば上の例で出した「売上目標300万円のラーメン屋」。

 

 

 

先ほどと同じ営業時間・客単価を前提に、家賃30万円で設置できる客席数を15席で想定。

 

  • 営業時間:10時間
  • 客単価:1000円
  • 席数:15席
  • 回転率:2回/h(ラーメン屋はこれくらい)

 

すると、行列店の場合であれば…

 

1000円×10時間×15席×2回転=30万円/日

 

26日営業だとすると売上は780万円になります。

 

となると家賃比率はなんと「3.8%」まで落ちます。

 

さらに、ここでは「都内」を想定して「家賃30万円で席数15席」にしましたが、場所によってはもっと入ります。

 

また、これは「行列が絶えないお店」という前提ですが、ここまで人気のお店であれば月30日営業することが多いでしょう。

 

となると120万円売上が上がります(900万円)ので、家賃比率はさらに下がって「3.3%」くらいです。

 

また、その分「利益率」は10⇒16.7%に上がりますね。

 

※光熱費内の「固定費部分」の比率も下がっているので、実際は利益率18%くらいになるでしょう

 

 

ここで何が言いたかったのかというと、

 

  1. 「目標売上」を超す人気店になれば、家賃比率がめちゃくちゃ下がる
  2. つまり「人気店が新店を出す=最初から家賃比率を上げても利益がしっかり残る可能性がある」ということ
  3. つまり家賃比率「10%」は、無名で開店する際に「リスクを極力削るための指標」という側面が強い
  4. あと「家賃が安い場所=利益が出ない」というわけではなく、力が付けば行列店になるため、そのような場所だと「家賃比率1~2%」くらまで下げることも可能(結果的に。)

 

ということです。

 

この記事を書いていて、改めて10%という数字は「利益を残す指標」ではなく「リスクを削るための指標」だなと思いました。


 

 

 

 

家賃比率が10%を超えている場合どうする?

最後に「家賃比率が10%を超えてしまった場合」について。

 

これは「売上が思った通りに上がらなかった場合」の話ですね。

 

すでに説明のとおり、家賃は「固定費」です。

 

つまり家賃比率を下げるには、「オーナーが家賃を下げてくれる」という奇跡が起こらない限り、「売上を上げる」以外に方法はありません

 

他の経費を抑えることで「利益率」は上がりますが、「家賃比率」は下がりません。

 

なのでやるべきことをまとめると、

 

  • 売上を上げる
  • なるべく「利益」を確保するため、変動費である「原価・人件費」などを削減する

 

です。

 

ただし利益を確保しようと「味を無理やり落とす」「従業員の数を減らす」等をすると、却って「商品力・サービス力の低下」によって売上ダウンのスパイラルに陥りますので要注意。

 

営業開始後は「家賃比率」に悩んでいても仕方がないので、「少しでも売り上げを上げること」に全力を尽くしましょう。

 

 

 

まとめ

飲食店における家賃比率の「重要性」や「10%の本当の意味」について解説しました。

 

最後に簡潔にまとめます。

 

  • 「家賃比率」とは「売上に対する家賃の比率」のことを言う
  • 家賃は「固定費」なので、売上が上下すれば家賃比率も上下する
  • 「想定していた売上目標」に達しなかった場合は、「売上の目標未達率」よりも「利益の減少率」の方が高くなる
  • これは売上が落ちても「固定費は変わらない」ことで、利益を圧迫している証拠である
  • このページでは「目標の7割しか来客がない」ことを例に説明しているが、これは十分に起こり得る話である
  • 家賃比率を上げて設定していた場合、売上が当初目標より低い時に、「家賃比率の上げ幅」以上に「利益率の下げ幅」は大きくなる
  • つまり「固定費である家賃比率は低ければ低いほど良い」ので、10%以下に抑えられるならそれがベスト
  • 逆に目標売上よりも売り上がった場合は、家賃比率がどんどん下がり、最終的に1~2%に抑えられることもある
  • 人気店の看板をぶら下げて新規店舗を開店する場合、目標売上に対する家賃比率を予め多少高く設定していても、利益を出せる可能性は十分ある
  • 「10%」という数字は、「統計的に10%前後が多い」という点と、「新規開業時にリスクを抑える」ために語られている数字であると考えている
  • 家賃比率が高い場合、「家主へ家賃交渉」「売上を上げる」以外に家賃比率を下げる方法は存在しない

 

 

記事中でも説明した通り、「売上」に対するシミュレーション不足で失敗するお店は多々ありますが、それ以外の「失敗する要因」も把握しておきましょう。

 

 

もちろん利益が出れば小さい飲食店でも「年収1000万円」は狙えますので、夢はあるお仕事です。

 

 

このページで触れた「FLコスト」については、以下で掘り下げて解説しています!

>>FLコスト・FL比率がパッと分かる!行列店オーナーが図解します