【超カンタン】原価率とは?計算と注意点、繁盛させる3つの考え

【超カンタン】原価率とは?計算と注意点、お店を繁盛させる3つの考え方を現役オーナーが解説

こんにちは。

 

大阪で、行列の出来るラーメン店「人類みな麺類」など、6つのラーメンブランドを運営している松村貴大(@jinrui_mina_men)と申します。

 

ラーメン屋以外にも、「焼き肉屋」「大学の食堂」などを運営しています。

 

▼人類みな麺類▼

 

ビジネスにおいて気になる事柄の一つが「原価率」でしょう。

 

特に「飲食業」では注視されることが多く、重要な指標です。

 

このページでは、そんな「原価率」について

 

  • どのように計算するのか?
  • どれくらいが目安だろうか?
  • 原価率を下げてボロ儲け出来るのだろうか?
  • 逆に原価率を上げて差別化できないだろうか?

 

などを分かりやすく解説していきます。

 

 

 

 

このページをお読み頂ければ「飲食店の原価・原価率」の全てが分かるようにまとめました。

 

これから飲食店開業される方は、ぜひ最後までご覧頂ければ幸いです。


 

 

 

 

「原価率」とは?計算方法は超シンプル!

まずは「原価率とはそもそも何か?」という部分を簡単に説明します。

 

これはとってもシンプルな話で「売上」に対する「原価」の割合のことを言います。

 

 

 

たとえば「売上500万円」の時に「原価150万円」であれば原価率は30%。

 

計算式は以下の通り超シンプルです。

 

原価 ÷ 売上 × 100 = 原価率

 

 

 

商品に対する原価率

業務の中で「食材ロス(廃棄)」が出ると、当初の想定より原価率が上がってしまうことがあるため基本的には上で説明した通り「売上に対する原価」を考えれば良いです。

 

しかし商品開発などでメニューごとの原価率を考えることもあります。

 

たとえばラーメン一杯の原価が300円で売価が850円の場合は、原価率は35.2%。

 

計算式は以下の通り超シンプルです。

 

原価 ÷ 売価 × 100 = 原価率

 

 

 

原価率を先に決めて、売価を決める場合

たとえば原価400円の商品が作れたとして、原価率を30%として価格設定したいという場合。

 

この場合は1333円が売価になりますが、計算式は以下の通りです。

 

原価 ÷ 原価率 = 売価

※上の例では400円÷0.3=1333円

 

 

 

「原価率」は最終的には売上ベースで見よう

上でも触れましたが、商品開発する時は各商品に対する原価率を出すのが一般的ですが、ロスが出たり、季節による食材の価格高騰などで原価は上下します。

 

そのため最終的には「売上に対する原価率」をチェックしておいた方が良いです。

 

そして飲食店ではこの「原価率」を『30%以内に抑えようね』と言うのが通説になっています。

 

ですがそこに「飲食店経営の罠」がありますので要注意。

 

 

 

 

飲食店の原価率にまつわる3つの注意点

ではここからが本題です。

 

まずは飲食店の原価率について「経営前に知っておくべき3つの注意点」を説明していきましょう。

 

 

原価率にまつわる3つの注意点
1.原価率は「飲食ジャンル」によって大きく変わる!

『原価率は30%を目安に…』は、盲目に信じてはいけません。

 

飲食業界では「原価率は30%」というのが一般的指標とされていますが、これは「FLコスト比率を60%以内に抑えるため」です。

 

FLコストとは、

 

  • 「F」=Food=食材原価
  • 「L」=Labor=労働=人件費

 

つまり「食材原価と人件費の合計」を指しているのですが、「この2つの数字を、売上の60%以内に抑えよう」というのが一般論。

 

その結果「原価率30%・人件費率30%」という、暗黙の基準が出来上がっています。

 

実際、私の本業である「ラーメン屋」に関して言えば、だいたいこの水準に収めています。

 

とは言え、実態としては飲食ジャンルによって「原価」と「人件費」の比率は大きく変わってきます

 

分かりやすい例えを出すと、「効率重視のラーメン屋」では一人で8~10席のお客さんを相手にすることが可能です。

 

つまり「人件費」を抑えることで「原価」を上げることが出来る。

 

一方、女性と話すことが前提にある「ガールズバー」では、「お客さんに対しての従業員比率」が高くなる傾向にあります。

 

その代わり「ドリンク」がメイン(原価が抑えられる)なので経営が成り立ちます。

 

 

 

つまり「あなたが今から開業したい飲食ジャンル」によっておおまかな基準が変わってくるため、大前提として「30%」という数字に囚われない方が良いのです。

 

 

「FLコスト比率の詳しい話」や「ジャンルごとのおおよその目安」に関しては FLコスト・FL比率がパッと分かる!行列店オーナーが図解します を参考にしてみて下さい。


 

 

 

原価率にまつわる3つの注意点
2.「ヤバイくらいの原価率」でも経営できる!

飲食業を知らない知人に話したら『その原価率ヤバくない?』という返事をされたので、とりあえず「ヤバイ」という言葉を使ってみました。

 

あなたは「原価率がヤバイ」と聞いたら、めちゃくちゃ「低い値」を思い浮かべますか?それとも「高い値」ですか?

 

実はどちらも正解でして、下げようと思えばいくらでも原価率は下げられますし、高い原価率で営業しているお店もあります。

 

原価を下げれば味はもちろん落ちますが、たとえば

 

  • 子どもが遊べるスペースがある
  • キレイな景色が見える
  • 接客に「エンターテイメント性」が溢れている
  • 他人との交流ができる
  • 夜風にあたることができる

 

などなど、付加価値を加えることによって「存在価値」を高められます。

 

たとえばこんな感じに…

 

 

つまり「付加価値の大きさ」で勝負するなら、極端な話で言えば原価率は10%くらいまで落とすことも可能でしょう。

 

反対に「原価率が高いお店」と言えば、例えば「俺のフレンチ」が有名。

 

創業者である坂本孝氏の書籍「俺のイタリアン、俺のフレンチ」の著者情報欄には、

 

「1日3回転以上の人気を博し、原価率60%以上でも十分に利益を出す業態を展開している」

 

と書かれています。

 

先ほど『原価率と人件費率を合計して60%以内にするのが一つの指標』と説明しましたが、ここではなんと原価率だけでその基準を超えているのです。

 

実際「俺の●●」はスゴイ勢いで店舗数を増やしているので、これも「正しい経営」と言えるでしょう。

 

つまり「飲食ジャンルによって原価と人件費のバランスは変わる」と説明しましたが、付け加えると「ジャンル関わらず、お店によっても原価率には雲泥の差がある」ということを認識しておきましょう。

 

『30%にしなきゃいけないんだ』という固定概念に縛られていると、フレキシブルな発想を妨げてしまうのでご注意を。

 

 

 

原価率にまつわる3つの注意点
3.粗利の大きさにも着目しよう

「原価率」だけに囚われず、「粗利」の大きさにも着目してみましょう。

 

「粗利」とは別名「売上総利益」とも言いますが、これは「売上から原価を引いた時に残る利益」です。

 

 

 

たとえばステーキ1皿1000円で原価率60%だとすると、粗利は400円。

 

では「売価400円で原価20%のフライドポテト」と比べた時に、どちらの出数が増えるのが理想でしょうか。

 

 

答えは「原価率60%のステーキ」です。

 

つまり「原価率」だけを見るのではなく「粗利」の大きさにも着目して、より粗利が上がるように考えなければなりません。

 

粗利について一つ例を出すと、五反田や銀座にある「原価バー」というダイニングバーが説明しやすいです。

 

原価バーには以下の様な特徴があります。

 

  • 入場料は1人1700円(五反田店(執筆時点)
  • ドリンク・フードは原価で飲食できる

 

これを「粗利」の観点で見たらどうなるのか…?

 

 

 

ドリンクやフードでは利益が1円も出ませんが、粗利としては1700円出ています。

 

仮に「原価率30%のお店」の場合、粗利を1700円出そうと思うと約2430円の売上が必要ですね。

 

「集客」の話になりますが…
つまり「客単価2430円以上」を出せる戦略があるのであれば、普通のお店をする方が「お客様1人に対する利益」は出ます。

 

しかし原価バーでは「たくさん飲む人ほど得する」というメリットがあり、その人たちには「大きな付加価値」となり、それが大きな差別化(集客ポイント)となっています。

 

原価バーの実際の「回転数」がどれくらいかは分かりませんが、仮に同じシステムを導入して

 

  • 客単価が今より少し下がる
  • 回転数が今の2倍にあがる

 

のであれば、確実にこのシステムを取り入れた方が利益に繋がるでしょう。

 

 

最後は「集客(差別化)」の話へと脱線してしまいましたが、『原価率ばかりに着目せずに、粗利も見ましょうね』というお話でした。

 

関連ページ
>>【中学生でも分かる】粗利とは?計算方法と粗利率の意味・重要性


 

 

 

 

繁盛させるための「原価」への考え方!

お店を繁盛させるためには、原価に対して以下の様な考えも持っておくと良いと思います!

 

 

繁盛させるための「原価」への考え方
1.原価率は各メニューを総合して考えよう!

たとえば『原価率30%を目標にしよう』と考えた場合は、「1商品で30%を目指す」のではなく、「各メニューの原価」を「売上比率」と相談しながら決めていきます

 

たとえば…

 

  • ラーメン:原価率40%
  • 餃子:原価率20%

 

だった時、もしも売上比率が「1:1」だった場合は原価率は30%になりますよね。

 

一般的には「ドリンク」の原価率は安くなりますので、そのような「原価率の安い物」の出数(注文数)が増えるような工夫を施せば、「看板メニュー」の原価率を上げても問題ないのです。

 

たとえば「原価率の高い“ビール”ではなく、原価率の低い“ハイボール”の注文数が増えるように、ハイボールセットを開発する」など。

 

なお、先ほど「ヤバイくらいの原価率」でも経営できる! 内で触れた「俺の●●」グループのお店に関して、「原価率60%以上でも十分に利益を出す業態を展開している」と説明しました。

 

これは著者情報欄に書かれている内容をそのまま説明したのですが、本の中では「フード・ドリンク平均原価率」を「45%」として試算しています

 

つまり看板メニューに関しては「原価率60%以上」で攻めつつも、ドリンクやサイドメニューを含めれば原価率は45%ほどまで落ちると考えているのですね。

 

このように「売上比率」と「各メニューの原価率」をトータルで見て、目標の原価率に近づけていきましょう。

 

 

 

繁盛させるための「原価」への考え方
2.まずは「勝てる戦略」から考えよう

「ヤバイくらいの原価率」でも経営できる! でも説明しましたが、「利益が出れば原価率に決まりはない」のです。

 

原価バーでは原価率「100%」ですが、これは『原価率は30%だ』という前提で考えていると絶対に閃かない戦略ですよね。

 

飲食店を経営する時には「原価率」から考えるのではなく、あくまでも「コンセプト作り」から始まります。

 

「どこに・誰のために・何のために・どのように」お店を出すのか。

 

これを考える中で「付加価値」が見えてきます。

 

例として挙げた「キッズスペースのあるお店」も、コンセプト作りの中で決まりますよね。

 

 

子連れの女性が多い地域だからこそ、原価率が低く味が微妙であっても「キッズスペースのあるお店」が輝きます。

 

また、たとえばラーメン屋の相場が「売価800円・原価30%」の中で、アッパー層を狙った「売価3000円・原価35%」のお店があっても良いですよね。

 

そこに価値を見出してもらえるのであれば、原価率は上下しても構わないのです。

 

何度も言うとおり「30%」は目安でしかありませんので、『これなら勝てる』という構想を前提にして原価率の話に落とし込みましょう

 

 

『原価率60%以上なんて実現不可能だ』と言われる中で、「俺の●●」は店舗を増やし続けています。

 

原価バーも「新しい発想」でしたが、いずれも「型に囚われていない思考」が成功に導いていますね。

 

『原価率30%に合わせよう…』と商品開発していては、インパクトのある大胆なものはなかなか出てきません。

 

原価率が高いのであれば、「他をどう抑えられるか」という観点でも考えていきましょう。


 

 

 

繁盛させるための「原価」への考え方
3.人件費の削りすぎにも注意しましょう

『原価の上下は自由だ!原価率の高いお店でも成功事例はある!』とお伝えしましたが、原価率が高くなれば、必然的に他の経費にシワ寄せが来ます。

 

「“FLコスト比率” は60%以内が一般的な指標」という話もした通り、それに当てはめれて考えれば自ずと「人件費」が削られていくでしょう。

 

 

 

 

ですが現代は「サービスレベル」にも一定の水準を求められます。

 

以前、697人にアンケートを取ったところ以下の数字が出ました。

 

  • 味が美味しくても、「不快な接客」ならもう行かない

    ⇒82%

  • 味が普通でも、接客態度が良ければその後も通う

    ⇒67%

 

つまりいくら原価率を上げて「美味しさ」に磨きをかけても、「不快な接客」では満足度が上がりません。

 

「不快な接客」とは言い換えれば「サービスの質が低い」ということですが、人件費が削られすぎることによって、たとえば

 

  • なかなか料理が出てこない/注文を取りに来ない
  • バタバタしてて店内が落ち着かない
  • 忙しいがゆえに物の扱いが雑になる
  • 料理の説明が雑になる
  • 提供タイミングが悪い
  • 新人教育が間に合っていない
  • オーダー間違えがおこる
  • etc...

 

といったサービスレベル低下が懸念されますよね。

 

そのため原価率を上げるのであれば、『原価率の上昇分をどこで吸収するのか』をしっかり考え抜く必要があります

 

ちなみに逆に「原価率を下げる」場合は、しっかり付加価値を付けることが「お店を選んでもらえる理由」に繋がります。

 

闇雲に原価率を下げていては、「味の低下」により客離れに繋がりますので要注意。

 

一度『味のレベルが落ちたな…』と思われると、その後戻ってきて頂くのは難しくなります。

 

 

『じゃあ、原価率が高いお店はどうやって収益あげてるの?』という問いに対する答えの一つを、このあと紹介します。


 

 

 

 

原価率が「高い」場合にどのように利益を出すの?

上で『原価率を上げるのは良いが、人件費を削りすぎてサービスレベルが落ちることも懸念される』と言いました。

 

となると「原価率が高い場合」には、どのように利益を確保するのか?

 

一つは「原価バー」のように『原価率100%だけど、“入場料” という概念を持ち出して利益を得る』という方法があります。

 

それ以外には「人件費を削ることで提供時間は遅くなるが、待っている時間も楽しめる仕組みを作る」という方法もあると思います。

 

また「大将一人で切り盛りしてて提供時間は掛かるけど、めっちゃ美味くて友達にも紹介したくなる寿司屋」の場合でも、「原価率↑人件費↓」を実現しつつ利益確保できるでしょう。

 

 

「固定費」の比率を下げられれば利益は出せる

では「俺の●●」グループのように、原価45%ほどで人件費も掛かっているであろう(一流シェフも雇用しているとのこと)お店はどうなっているのか?

 

あんなにポンポンと店舗数を増やせるのは、しっかり利益があるからではないのか?

 

私は書籍「俺のイタリアン、俺のフレンチ」を読んでいないので答えは分かりませんが(その中に答えが書いてあるのか否かも分かりませんが)、おそらくは回転率を上げまくって、「固定費比率」を下げているのだと思います。

 

なのでここでの結論を先に言うと、

 

売上が上がれば上がるほど「固定費の比率」は下がっていくので、原価率が高くても利益確保できていると思われる

 

です。

 

答えは分かりませんが、以下は私なりの推測です。

 

まずAmazonの書籍「俺のイタリアン、俺のフレンチ」の試し読みの中にある「シミュレーション」から、ざっくり以下のことが分かります。

 

  • 毎日お店を「2.5回転」させる

    売上900万円⇒利益60万円(利益率6.6%)

  • 毎日お店を「4回転」させる

    売上1440万円⇒利益240万円(利益率16.7%)

 

なんと売上が1.6倍する中で、利益率は2.78倍になっています。

 

 

『おいおいそんなことあり得るのか?』

 

 

と思ってしまいますが、この後説明するように一応成り立ちます。

 

なお、ここでもしも「変動費」の割合が大きければ、どれだけ売上が伸びようとも利益率は伸びない(売上が上がる中で費用も上がってしまうから、利益率は伸びない)ため、「固定費」にポイントがあるのでしょう。

 

飲食店ではおおよそ以下の通り「経費」が発生しますが、ここでは上記のシミュレーションの数字をお借りして、売上900万円で利益率6.6%が残るように入れ込んでみました。

 

 

上記は「原価率45%・利益率6.6%」をベースに、おおよその値を入れ込んだ結果です。

 

なお人件費は「一流シェフも雇っている」という情報のもと24.4%にしてみました。(30%くらいあってもおかしくありませんが…)

 

「900万円売って60万円の利益を出す」ということで、これだけでも「ビジネスとしては成り立っている」ということが分かると思います。

 

 

売上が上がると「固定費」比率は下がるが…

上のシミュレーションでは、利益率は6.6%。

 

ですが「俺の●●」グループの勢いを見ていると、利益率はもっと出ているのではないでしょうか。

 

では先ほどの値のうち、後者を見てみましょう。

 

  • 毎日お店を「2.5回転」させる

    売上900万円⇒利益60万円(利益率6.6%)

  • 毎日お店を「4回転」させる

    売上1440万円⇒利益240万円(利益率16.7%)

 

先ほども言いましたが、売上が1.6倍する中で、利益率は2.78倍になっています

 

では、売上1400万円・原価率45%を同じように入れ込んでみます。

 

 

ここで上記の赤枠にご注目下さい。

 

なんとこれらの「比率」が下がっていることから、利益率16.7%という値が組め込めています。

 

比率が下がった項目

  • 人件費:24.4% ⇒ 22%
  • 家賃:10% ⇒ 6.25%
  • 光熱費:7% ⇒ 5%
  • その他費用:7% ⇒ 5%

 

 

『いやいや比率は最初に決めたよね?比率を下げるとかセコくない?』

 

 

というツッコミもありそうですが、これは売上が上がる中で必然的に下がるものです。

 

「家賃」比率が下がった理由

家賃はもともと「90万円」という決め打ちでした。
売上900万円であれば家賃比率10%ですが、売上1440万円になれば家賃比率は6.25%まで落ちます。
ちなみガラガラでも満席でも家賃は同じ。
つまり「お店の回転数が上がる」ということは、「物件を最大限まで使い込んでいる」ということです。

 

「光熱費」比率が下がった理由

『光熱費は使えば使うほど上がるから“変動費”だよね?比率が下がるのはおかしくない?』と疑問が浮かぶ方もいらっしゃるでしょう。
ですが光熱費は「固定費」+「変動費」という特性があります。
満席でも空席でも「店内を暖めるエアコン代」や「物を冷やす冷蔵庫代」は変わりません。
つまり「売上が上がる中で使用量の増える光熱費」もあれば「もともと一定掛かっている費用」もあるということです。
後者の費用は上がらないため、売上に対する光熱費比率としては多少下がります。

 

「その他費用」比率が下がった理由

その他費用には、おしぼりや割り箸と言った消耗品(変動費)のほか、毎月固定で掛かる「減価償却費」「リース代」などが含まれます。
これら「固定費」部分に関しては、売上が上がれば上がるほど比率が下がります。

 

「人件費」比率が下がった理由

人件費は「変動費」ですので、通常は比率を下げることは無いでしょう。
ここでは前提にあった「利益率16.7%」に合わせるために人件費を2.4%落としましたが、効率化されたお店であればそれでも回せるでしょう。
ただし「“従業員一人あたりの仕事量” を極限まで上げている状態」とも言えるため、クレームが出るギリギリラインかもしれません。
したがって、「人件費比率」ではなく他の経費を落としたシミュレーションをした方が良い可能性があります。

 

 

上記はすべてAmazonの書籍「俺のイタリアン、俺のフレンチ」内にあるシミュレーションをもとに、前提として書かれていた売上・利益率から勝手に推測したものです。

 

実際の値は全く見当違いな可能性がありますので、その旨ご了承ください。

 

とは言え「売上が上がると “利益率が上がる” ため、原価率が高めでも最終利益を残すことは出来る」ということはお分かり頂けたかと思います。


 

 

 

 

原価率を下げるための5つの方法!

では最後に「原価率を下げる方法」です。

 

「味を下げながら原価率を下げる」のは避けた方が良いですが、無駄を省くなどで多少は原価率を下げられます。

 

 

原価率を下げるための5つの方法
1.仕入れ原価そのものを下げる

もっとも単純な方法が「仕入れ原価」そのものを下げるという方法。

 

大きく以下の3つが考えられます。

 

  • 仕入れ業者と直接交渉する
  • 仕入れ総量を上げることで、単価を落としてもらう
  • 仕入れ業者自体を他の業者へと変更する

 

最近は「生産者から直接仕入れる」というお店も増えてると思いますが、この場合は大前提に「コネ」もしくは「営業(開拓)」が必要です。

 

また「産地からの送料」が上乗せされてしまうため、一度に大量に送らなければあまり原価率ダウンに繋がらないかもしれません。

 

かと言って大量に送ってもらった食材を、「腐る前に捌ききれるのか?保管する場所があるのか?」といった問題も発生します。

 

 

 

原価率を下げるための5つの方法
2.ロスを減らそう

「チリも積もれば」ということで、ロスを減らすことでも原価率ダウンに繋がります。

 

  • メニューの数を減らす
  • 材料を使いまわせるメニューにする(材料の標準化)
  • 在庫管理方法を見直す
  • 売上予測をしっかり立てる

 

一部のメニューでしか使用しない食材は、高い確率でロスになります。

 

つまり「そもそものメニュー数」を減らせばロスが減る可能性が高まりますが、材料を使いまわせるようなメニュー構成にすることも大切です。

 

ラーメン屋で言えば「チャーシューの切れ端を “チャーシュー丼” として提供する」というのが分かりやすいですね。

 

なお、お店の知名度が上がるほど「安定的な来客となる」ため、在庫管理は楽になります。

 

「売上が上がれば “利益率” が上がる」とお話しましたが、お客さんが少ない時と比べると、売上が上がった時の方が「ロスの減少」により原価率が多少下がります。(結果 “利益率” は多少上がる)

 

 

 

原価率を下げるための5つの方法
3.オーバーポーションを避ける

「定めている分量よりも多めに使ってしまうこと」をオーバーポーションと言います。

 

これによって「原価率が上がる」だけではなく、

 

  • 本来よりも量が多いため、お腹が満たされ「サイドメニューの注文率」が下がる可能性がある
  • 量が安定しないため『前より少ないぞ?』『ドレッシングが濃いぞ』と不本意なクレームに繋がる可能性がある

 

というデメリットも。

 

目分量で手掴みすることも多いと思いますが、ある程度「標準化」しておく方が良いです。

 

またマニュアルでは「少々」という曖昧な表現ではなく「数値化」しておく方がはっきりとします。

 

 

厳密にし過ぎてオペレーションが複雑化しては元も子もありませんので、「簡単」かつ「正確」に出来る方法を模索しましょう。


 

 

 

原価率を下げるための5つの方法
4.旬の食材を使う

旬の食材は供給量が増えますので価格が安くなり取り入れやすいです。

 

また「今しか食べられない限定メニュー」としての集客効果も狙えます。

 

 

 

原価率を下げるための5つの方法
5.価格を引き上げる

『相場より頑張って下げている』という状態であれば、一度『適性な価格で売ることは出来ないのか?』と考え直してみましょう。

 

大前提として、価格競争に巻き込まれると個人店は生き残るのが大変です。

 

そのため「価格」以外の「売り(付加価値)」を付けていきましょう。

 

ちなみに「原価は全てのメニューをトータルに考える」「粗利も考える」という2点も改めて認識しておきましょう。

 

なお「値段を下げる」だけが「売り方」ではありません。

 

たとえば…

 

  • 「商品を売る」のではなく「商品を伝える」ことで簡単に売れてしまう
  • ネーミングやメニューの工夫だけでも売れる

 

といった話を、例も交えて以下の記事でお話していますので、興味がありましたら合わせてご確認下さい。

 

関連ページ
>>飲食店で調理師免許は不要だが、繁盛させる上で必須なモノを教える

 

 

 

 

まとめ

めちゃくちゃ長くなってしまいましたが、飲食店における「原価率の目安」や「知っておくべきこと」「原価率の下げ方」などを私なりに解説しました。

 

最後に簡単にまとめます。

 

 

原価率とは?

  • 原価率とは、「売上」に対する「原価」の比率である
  • 計算式は【原価 ÷ 売上 × 100 = 原価率】

 

絶対に知っておくべきこと

  • 「原価+人件費」をFLコストと言い、「このFLコストを売上の60%以内にしよう」というのが一般的な指標
  • そのため「原価30%・人件費30%」が暗黙の基準として語られるが、飲食ジャンルによって原価・人件費の比率は変わる
  • 原価率を10%ほどに下げても、「付加価値」を付けることで「存在価値」は出せる
  • 原価100%というお店もある(入場料で利益を出している)
  • 原価率だけでなく「粗利(売上-原価)の大きさ」にも注目しよう。「原価率が低い=利益が多く残る」とは限らない

 

繁盛させるための原価への考え方

  • 原価率は「各メニューの原価」「売上比率」を総合的に考える
  • 原価率に囚われず、まずは「コンセプト作り」から始めることで、原価率をどこまで上下させて良いのかが見えてくる
  • 「味は美味しくとも、接客レベルが低ければ再訪はない」という声が80%を超えるため、原価を抑えるためとは言え、人件費の削りすぎには細心の注意を払うこと

 

「原価率が高い」時の利益の出し方

  • 『原価率100%だけど、“入場料” という概念を持ち出して利益を得る』という方法
  • たとえば「大将一人で切り盛りしてて提供時間は掛かるけど、めっちゃ美味くて友達にも紹介したくなる寿司屋」をする。つまり「味」と「人・店の雰囲気」で集客する
  • 原価率が高くとも、売上が上がれば「固定費(家賃・光熱費の一部・雑費の一部)」比率が落ちるため、利益はしっかりと残る

 

原価率を下げる5つの方法

  • 仕入れ原価そのものを下げる
  • ロスを減らす
  • オーバーポーション(分量以上使うこと)を避ける
  • 旬の食材を使う(供給量UPで食材費が落ちる+限定メニューで集客効果)
  • 価格を引き上げる(付加価値(売り)を付け加えたり、売り方を工夫する)

 

 

このページで説明した「FLコスト」については、以下のページでも詳しく説明しています。

>>FLコスト・FL比率がパッと分かる!行列店オーナーが図解します

 

 

また、以下の記事では「繁盛店を創り上げる上で大切な要素」をたくさん説明していますので、ぜひご一読ください!

 

 

開業する以上気になるであろう「お金のお話」は以下をどうぞ。