歩合制の意味とは?メリット・デメリットと、「フルコミッション」との違いについて解説
こんにちは。
大阪で、行列の出来るラーメン店「人類みな麺類」など、6つのラーメンブランドを運営している松村貴大(@jinrui_mina_men)と申します。
世の中には「歩合制の仕事」が多いですが、『歩合制って何?』と疑問の方も多いでしょう。
そこでこのページでは、歩合制の意味・使われ方、「フルコミッション」「インセンティブ」などとの違い、歩合制のメリット・デメリットを解説していきます。
「歩合制」と一口に言っても契約内容で大きく中身は異なるため、ここではざっくりと「歩合制」の概念を理解できるように解説します。
「歩合制」とは?意味を分かりやすく解説
歩合制とは、働いた結果生み出された「成果(売上)」に応じて、お金が支払われる仕組みのこと。
たとえば「売上の10%を支払います」という条件であれば、あなたが500万円分の売上をあげた場合は50万円を受け取ることが出来ます。
もしも月給30万円という固定給だった場合は、どれだけ必至に売上をあげても給与は30万円から上がりませんが、歩合制であれば成果を挙げればあげるほど、多くのお金を受け取ることが出来ます。
年功序列では古株の社員より稼ぐことは難しいですが、歩合制が導入されていれば追い越すことも可能です。
歩合制には大きく二種類ある
この「歩合制」は大きく以下の2パターンに分かれています。
- 固定給+歩合制
- 完全歩合制
この2つの違いは「毎月必ず支払われる金額(固定給)」が有るか否か。
ではここから、2つのパターンについて解説します。
歩合制のパターン①固定給+歩合制
「固定給+歩合制」の場合は、どれだけ自分自身の売上が悪くとも(成果が上がらずとも)最低限の決まった給与は支給されます。
このパターンの歩合制が取り入れられる事の多い職種としては、以下の様なものがあります。
- 保険の営業
- 不動産の営業
- 美容師
- タクシードライバー
- エステ・ネイルサロンスタッフ
これらの仕事は「個人の能力が業績に大きく影響する」ため、固定給に加えて歩合制が取り入れられる事が多いです。
歩合制のパターン②完全歩合制
一方の「完全歩合制」とは、固定給(基本給)が無く、報酬はすべて成果に応じて決まります。
つまりどれだけ長時間労働をしたとしても、成果が上がらなければ報酬は0円。
一方で効率よく成果を残すことが出来れば、少ない労働で大きな報酬を得ることも可能です。
ちなみに「完全歩合制」は、雇用関係にある間柄では適用できないと法律で決まっています。
そのため個人事業主との「業務委託契約」になります。
つまり、もしも求人情報に「完全歩合制」と書かれているのであれば、それは「正社員や契約社員ではない」と認識しておきましょう。
なお「業務委託契約」=「完全歩合制」というわけでもありませんので、その点もご注意を。
「フルコミッション」と同じ意味である
ちなみに、世の中には「フルコミッション(full commission)」という言葉がありますが、これは「完全歩合制」と同じ意味。
似たような横文字の言葉で「インセンティブ」という言葉が用いられることも多いですが、インセンティブは「(通常の)歩合制」を意味することが多いです。
つまり「基本給がある上で、成果に応じて報酬をプラスする」というイメージです。
完全歩合制(フルコミッション)が多い職種としては、
- 不動産関連業
- 保険関連業
- 通信回線の営業
- クリエイター
などがあります。
どの職種も契約の仕方次第ですので、歩合制もあれば完全歩合制もありますし、固定給もあります。
歩合制の4つのメリット!
では、歩合制の仕事を選ぶことにどのようなメリットがあるのか解説します。
歩合制のメリット①成果次第で大きく稼げる
歩合制の最大のメリットは収入に上限がないこと。
もっとも分かりやすいのが「商品単価が高いものを売る営業」であり、たとえば「不動産営業」が当てはまります。
もしも売上の2%が歩合給として得られる場合、5000万円の物件を1件成約するだけで100万円を得られます。
仮に毎月1件成約することが出来れば、年収は1200万円。
固定給のみの会社で働いた場合、たとえ年に数回の昇給があったとしても、一気に収益を伸ばすことは難しいでしょう。
日本では「年功序列」の会社がまだまだ多いですが、年齢に関係なく成果に応じた報酬を得たい方には適している働き方です。
もちろん歩合制・完全歩合制にも「条件」がありますので、就く職種・会社によって収益の上限値は大きく異なります。
歩合制のメリット②自分の裁量で働ける
2つ目のメリットは、「自分の裁量で、好きな時間に好きな場所で働ける」ということ。
「歩合制」の場合は当てはまらないことも多いですが、「完全歩合制」の場合には得られるメリット。
たとえば知人の保険営業マンは週に1日だけ定例会に参加して、他の日は自由にオンオフを設定しています。
要領よく成果を挙げることができれば、趣味の時間や家族との時間を確保出来ます。
歩合制のメリット③働くことが楽しくなる
自分の努力次第で報酬が増え、さらに仕事に関わる時間を自由に決められるようになれば、仕事へのモチベーションがアップします。
もちろん「固定給」でもやりたい仕事に就いて楽しめている方は大勢いらっしゃると思いますが、『頑張っても所得が上がらないから頑張る気が起こらない』という方にはピッタリな働き方です。
知り合いにも「ゲーム感覚」で保険の営業をしている者がいますが、仕事がとても楽しそうです。
歩合制のメリット④自分の頭で考え、行動するようになる
歩合制ではどうしても「個」の活動となりがちであり、誰かのサポートを受けることはありません。
もちろん働く上での最低限の研修などはあるでしょうが、その後は「成果を上げる方法」を自分で考え行動するのが原則。
チームで動く仕事であれば「ノウハウの共有」がありますが、実力主義の世界ではそれは期待できません。
これは一見「デメリット」のようにも見えますが、「すべて一人で考え、決定して行動にうつす」という判断・行動力が養われたり、積極的に行動することで経験・知識量も増えるため、メリットとも言えます。
なお「情報をクローズにしているか否か」は会社の風土にもよりますし、「良い情報を伝えれば良い情報が返ってくる」という人もいるでしょうから、コミュニケーション力次第な部分も多いです。
知り合いの某大手保険会社では、外回りが終わったあとに皆で「ロールプレイング」をするのがルーティンであり、個人戦ながら協力し合う風土が出来上がっているとのこと。
歩合制の4つのデメリット!
続いては歩合制のデメリットを4つ紹介します。
歩合制のデメリット①収入が安定しない
歩合制であれば基本給(固定給)がありますので最低限の収入は確保できますが、完全歩合制の場合は最悪なケースとして「月収0円」もあり得ます。
またフルコミッションで契約している個人事業主で、事務所を借りるなどしている場合は赤字にもなり得ます。
なおフルコミッションは特に「不安定」なため、「ローンが通りにくい」という面もあります。
契約が取れない場合に「収入がない」だけではなく、基準を満たさない場合は「解雇」「降格」というシビアな会社も存在しています…
歩合制のデメリット②フルコミッションだとプライベートとのメリハリをつけにくくなる
フルコミッションの場合は「自分の裁量で働けることが多い」と説明しましたが、意識的にオンオフをはっきりと区別できない人の場合、生活の大部分を仕事に充ててしまいがち。
もちろん仕事が楽しくてのめり込む方もいらっしゃいますし、それが悪いことではありませんが、『趣味の時間も大切にしたい』と考えている方はその点に注意です。
歩合制のデメリット③経費は自腹ということも多い
「接待交際費」はもちろん、「交通費」「ガソリン代」「駐車場代」「ETC料金」「通信費」などの経費が自腹となることは多々あります。
これも契約次第ではありますが、特に「完全歩合制」の場合においては、売上を上げるために多額の経費が必要となることもある事は認識しておきましょう。
歩合制のデメリット④会社の社会保険に入れない
これは「フルコミッション」として契約する個人事業主の場合の話ですが、雇用関係にないため社会保険に入れてもらうことは出来ません。
そのため自ら国民健康保険料や国民年金を収める必要があるほか、毎年の確定申告も必要になります。
経理処理は今は「クラウド型確定申告ソフト」などで簡単に出来るようにはなっていますが、源泉徴収が無い分、自ら手続きする煩わしさは発生します。
歩合制に向いている人の特徴5つ!
では最後に「歩合制・完全歩合制」に向いている人の特徴を挙げてみます。
歩合制に向いている人の特徴①数字を目標として追いかけられる人
歩合制やフルコミッションの一番のメリットは「売上が青天井であること」。
その「売上(数字)」に喜びを感じ、満足することなく高みを目指していける人には打ってつけの制度です。
歩合制に向いている人の特徴②主体的に動ける人
歩合制は「個人の裁量が大きく影響する職種」に採用されている事が多いことから分かる通り、「個の力」が試されます。
そのため「誰かに言われて動く人」は論外であり、自分でしっかり考え、行動に移せる人に向いている制度です。
歩合制に向いている人の特徴③精神的・体力的にタフな人
歩合制は自分の努力がダイレクトに給与へ影響することから、「売り続けなければならい」というプレッシャーは常にあります。
そして目標を達成できない時は「焦り」も生まれますが、その都度落ち込んでいる暇はありませんので、次なる戦略を練り続ける必要があります。
さらに(今後の見込み客を含め)人脈を広げるための「接待」や「飲み会」にも、頻繁に出なければなりません。
結果的に「休み無し」で働かざるを得ない状況にもなり得ますが、それを「必要な試練」として乗り越えられる力が必要です。
歩合制に向いている人の特徴④コミュニケーション能力に長けている人
コミュニケーション能力は、営業であってもクリエイターであっても「成果を挙げ続ける」ためには必須な能力。
営業であれば商品を分かりやすく、相手が『契約しようと』思える説明をするのは当たり前のこと、前段階の関係づくりからもコミュニケーション能力が必要とされます。
クリエイターは「自分自身を積極的に売り込んでいく力」が必要ですが、これは対面でも文面でも同じです。
顧客からの信頼を得るための(ビジネスライクな)コミュニケーション能力が高い人は、歩合制にも向いています。
歩合制に向いている人の特徴⑤スピード感のある人
「個」で信頼・信用を得ていくためには、「原稿をすぐ上げる」「電話はいつでも取る」「メールはすぐ返す」「すぐに駆け付ける」などスピーディーな対応力が必要。
また「物事の決断力を早めることで、立ち止まらないこと」という意味でもスピード感は大切です。
歩合制では「自分で判断する」の繰り返し。
『〇〇をやった方が良さそうだけど、もしかしたら××になるかも…』
必ずこのような状況に直面しますが、完璧を求めすぎずに「トライアル&エラー」を繰り返すスピード感は、歩合制に限らず、経営者としても必要な要素だと感じます。
まとめ
歩合制・完全歩合制(フルコミッション)の意味や、メリット・デメリットについて解説しました。
最後に簡単にまとめます。
- 歩合制とは、働いた結果生み出された「成果(売上)」に応じて、お金が支払われる仕組みのこと。
- 歩合制には、「固定給+歩合制」「完全歩合制(フルコミッション)」の2パターンある
- 「固定給+歩合制」の場合は、どれだけ自分自身の売上が悪くとも(成果が上がらずとも)最低限の決まった給与は支給される
- 「完全歩合制」では、固定給(基本給)が無く、報酬はすべて成果に応じて決まる
- 「完全歩合制」は、『雇用関係にある間柄では適用できない』と法律で決まっているため、個人事業主との「業務委託契約」となる
- フルコミッションと似た言葉で「インセンティブ」という言葉が用いられることがあるが、これは「歩合制」の意味が強い(厳密にはもう少し違う意味を表現することもある)
関連ページ
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