フリーランスに開業届は必要?出してないことによる「3つの損」を解説します
こんにちは。
大阪で、行列の出来るラーメン店「人類みな麺類」など、6つのラーメンブランドを運営している松村貴大(@jinrui_mina_men)と申します。
フリーランスとして仕事を請けている場合に、「開業届」は出す必要があるのか?また出した方が良いのか?
フリーランスの開業届の「要否」と「出すことによるメリット・デメリット」を分かりやすくまとめました。
フリーランスでは、開業届を出さないと「損」する人もいれば、そもそも出さなくても良いケースもあります。
ぜひ最後までご覧ください!
【結論】フリーランスの場合、出すべき人・出さなくてよい人の2通りある
まずは当ページの結論からお話します。
フリーランスの場合は、開業届を「出すべき人」と「出す必要が無い人」の2パターンに分けられますが、一般的に『フリーランスです』と名乗っている人の場合は、「出すべき人」に当てはまると考えておくと良いです。
『“出すべき” は “出さなければならない” ということなの?』と疑問に思う方もいらっしゃると思いますので、その点についてもこれから説明していきます。
「開業届を出すべき人」はどんな人?
まずはフリーランスとして「開業届を出すべき人」について。
これは「事業所得」を得ている人。つまり「個人事業主」です。
『フリーランスです』と名乗っている方の多くは、誰にも雇われず、個人・法人相手に仕事単位で仕事を請け負っていることが多いと思いますが、そのような方は「個人事業主」として仕事をしている状態です。
その場合、得た所得は「事業所得」として扱われるため、所得税法229条に書かれている「開業届を提出すべき条件」に当てはまります。
※もしも誰かに雇われて「給与」を貰っているのであれば、それは事業所得ではなく給与所得です
所得税法 第二百二十九条
居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない。
引用:所得税法
ちなみに、所得税法では「事業所得が生じてから1ヶ月以内に提出しなさい」と書かれていますが、「期限を守らない」「そもそも提出しない」という人に対してペナルティ(罰則)を設けていないことから、「提出しない・していない」という方がいらっしゃるのも事実。
ただし提出は義務ですし、開業届の提出には多くのメリットがありますので、「事業所得」を得ているのであれば原則は提出しましょう。
「開業届を出す必要がない」フリーランスとは?
一方で、フリーランスなのに「開業届を出さなくても良いパターン」もあります。
それは「フリーランス」という働き方によって、本業の他に副業感覚で「雑所得」を得ているケースです。
中には「フリーランス=個人事業主」と考えている方もいらっしゃると思いますが、そうではありません。
フリーランスというのは「仕事単位で契約する働き方」のこと。
たとえばサラリーマンが週末だけクラウドソーシングで「イラスト作成」を請け負って収益を得た場合、この「イラスト作成」の仕事の引き受け方としてはフリーランスです。
しかしサラリーマンの場合、副業で得た収益は基本的には「雑所得」として計上されることから、事業所得を得たわけでは無いため開業届を提出する必要がありません。
とは言え、副業であっても「所得が大きい」「名刺を作ってしっかり働いている」「事務所を構えている」などの理由から、「事業所得」として扱えるケースもあります。
「扱えるケースもある」という書き方にした理由としては、基本的に「雑所得」よりも「事業所得」として扱われた方が、節税の観点から有利だからです。
しかし「事業所得」として扱われる以上は、上で説明したとおり義務として開業届を提出しなければなりませんので、その点は要注意。
なお「雑所得」「事業所得」の線引きは明確な基準がないため、税理士によっても見解が異なると思います。
もしも副業の方で『開業届を出してフリーランスとして週末働きたい』とお考えの方は、税理士に相談してみると良いでしょう。
関連ページ
「開業届」を出さないと「3つの損」をする
ここまでの説明から、個人事業主としてフリーランスをしている場合は、基本的に「開業届の提出が必要である」ことがお分かりかと思います。
しかし中には「面倒だから提出したくない」という方もいらっしゃると思いますので、ここでは『出さないと損しますよ』というポイントをお伝えします。
ちなみに「開業届」や「その他の必要書類」は5分もあればパパッと作成できますので、『出そう』とお考えになった方は以下も参考にしてみてください。
>>【超カンタン】開業届をわずか5分で漏れなく正確に作成できる裏ワザを解説
出さないことによる「3つの損」①青色申告が出来ない
確定申告時に「青色申告」をするためには、事前に「青色申告承認申請書」と呼ばれる書類の提出が必要になりますが、その場合は開業届の提出も併せて必要です。
青色申告の最も大きなメリットとしては、最大65万円分の所得を控除することが可能になること。
※税金が65万円安くなるのではなく、課税対象の所得が最大65万円減額されます
例えば月収「30万円」「50万円」の2パターンで、確定申告の3タイプによって年間それぞれどれくらいの差が出るのかをシミュレーションしてみると…
このように確定申告のタイプによって、納税額は大きく変わります。
個人事業主として生きていくのであれば、青色申告による所得控除を受けられないのは「大きな損」となるでしょう。
関連ページ
>>青色申告特別控除とは?10・55・65万円の額の違いと、赤字の扱いを解説
出さないことによる「3つの損」②「屋号付きの銀行口座」を開設できない
開業届を提出する際には、屋号を記入することが出来ます。(屋号の記入は自由です)
そして「屋号を記入した開業届の控え」を銀行に持参することで、「屋号の入った銀行口座」を開設することが可能。
屋号の入った銀行口座を開設する一番のメリットは、「相手からの信用を得られる」という点です。
たとえばクラウドソーシングサービスだけで仕事をしているのであれば、こちらの銀行口座情報を相手に伝えることはありません。(仲介しているクラウドソーシングサービスに口座情報を登録するだけ)
しかしリアルな世界で仕事を受注する際は、相手に銀行口座を伝えることになりますが、その際に「個人の名前」よりは
- ●●デザイン
- Javaプログラマー●●
- ●●会計事務所
- 動画編集専門の●●
などの屋号が入っている方が、「事業としてきちんとしている」印象を相手に与えられます。
ビジネスの世界では「印象」は売上を左右しますので、少しでも「信用」を得やすい状態にしておくのがベター。
なお銀行によっては「その屋号で事業を行っていることが分かる証明書類」が他にあれば開設できる可能性もありますが、最も適しているものが「開業届の控え」です。
フリーランスで生きていくのであれば、印象で「損」することのないように開業届は出しておきましょう。
余談ですが、開業届の提出は「社会的な信用を得る」ことにも繋がります。
「開業届の控え」があることで、たとえば
- 融資を受けられる
- クレジットカード決済やQRコード決済導入(店舗がある場合の話)
などのメリットがありますが、これらは言い換えると「信用を得られている」のだと思います。
出さないことによる「3つの損」③「給付金」を受けられない可能性がある
2020年、新型コロナの影響により法人・個人事業主には「持続化給付金」が給付されました。
この時、提出書類に「開業届の控え」と書かれており焦った方も多かったと思います。
持続化給付金においては「特例」が設けられ、開業届の代わりとして【公的機関が発行した書類】を提出すればOKとなりましたが、これまたハードルが高いです。
「公的機関が発行した書類」としては、
- 営業許可証(飲食店などの営業する際に必要)
- 事務所の賃貸借契約書
- 古物商免許
などがありますが、フリーランスでこれらを持っている方はほとんどいらっしゃらないでしょう。
今後もこのような事態が起き得るため、対外的に「事業を行っている証明」となる開業届は、出しておいて損はありません。
これら以外にも色々ある…
ここでは自らを「フリーランス」と認識している方への「損」をまとめましたが、開業届を出すことによるメリットはほかにもあります。
たとえば「青色申告で家族の給与も経費にできる」などが挙げられますが、「フリーランス」と名乗っている方で、家族に給与を出している方は少ないと考え、ここではメリットの話としては省きました。
以下は「個人事業主が提出することのメリット・デメリット」についてですが、ほとんどのケースにおいて「フリーランス=個人事業主」ですので、ぜひ以下もご覧ください。
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開業届の作成は5分もあれば出来ます
開業届を「出さない」「出し忘れていた」と言う方の多くは、『開業届の作成が面倒だから…』『難しそうだから…』という理由でしょう。
しかし、開業届の作成は思っているよりもかなり簡単。
とは言え、開業届と同時に提出すべき「その他の書類」までも全て作成しようと思うと、『自分に何が必要なのか分からない』という状況になり、結局メンドウになってしまうもの。
そんな方に「開業届」と「その他の必要書類」を5分でパパッと作成する裏技も紹介していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
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まとめ
フリーランスの「開業届の提出」について解説しました。
最後に簡単にまとめておきます。
- フリーランスの場合、「出すべき人」「出さなくてよい人」の2パターンある
- 事業所得を得ている人(個人事業主として活動している人)は、所得税法に照らし合わせると、開業届の提出が義務づけられている
- 「提出していない」「提出が遅れた」という場合にも特に罰則がないため、提出しない人もいるが、個人事業主であれば「義務である」「提出することにメリットがある」という2つの理由から提出すべき
- 副業でフリーランスとして仕事を受けており、所得が「雑所得」となる人の場合は、開業届を出す必要はない
- 開業届と同時に「青色申告承認申請書」を提出することで、青色申告による「所得控除」などの恩恵を受けられる
- 屋号入りの銀行口座を作れる(社会的信用にも繋がる)
- 今後も「給付金」が発生した時に、スムーズに受けられる
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屋号について
「屋号」を決める際は、以下の記事を参考にしてみてください。
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- 【繁盛する店名】決め方と9つのアイデア、500人が選んだ印象的な名前
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⇒いつか屋号をそのまま会社名にしたい場合、会社名の「付け方のルール」に従っておく必要があります